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人麻呂恋歌13 ・・如何にして恋やむものぞ天地の神を祈れど吾(あ)は思ひ益す

ここのところ、少々忙しすぎ。。
Blogの更新も、飛行機作る暇もない。。
そういえば2週間ほど飛行機飛ばしてないなぁ。。。
人麻呂転載の続きです。。

2006/11/03のBlog
問答歌(とひこたへのうた)
3305 物思(も)はず 道行きなむも 春山を 振り放け見れば
  躑躅花 にほひ処女(をとめ) 桜花 栄え処女
  汝(な)をそも 吾(あ)に寄すちふ 吾(あ)をそも 汝に寄すちふ
  荒山も 人し寄すれば 寄そるとぞいふ 汝が心ゆめ
  (物不念 道行去毛 青山乎 振放見者 
  茵花 香未通女 櫻花 盛未通女 
  汝乎曽母 吾丹依云 吾・毛曽 汝丹依云 荒山毛 
  人師依者 余所留跡序云 汝心勤)

反し歌
3306 如何にして恋やむものぞ天地の神を祈れど吾(あ)は思ひ益す
(何為而 戀止物序 天地乃 神乎・迹 吾八思益)

3307 しかれこそ 年の八年(やとせ)を 切る髪の 我が肩を過ぎ
  橘の ほつ枝を過ぎて この川の 下にも長く 汝(な)が心待て
  (然有社 年乃八歳・ 鑚髪乃 吾同子・過 
橘 末枝乎過而 此河能 下文長 汝情待)
反し歌
3308 天地の神をも吾(あれ)は祈りてき恋ちふものはああ止まずけり
  (天地之 神尾母吾者 ・而寸 戀云物者 都不止来)

柿本朝臣人麿が集(うたのふみ)の歌に云く
3309  物思(も)はず 道行きなむも 春山を 振り放け見れば
  躑躅花(つつじはな) にほえ処女(をとめ) 桜花 栄え処女
  汝(な)をぞも 吾(あ)に寄すちふ 吾(あ)をぞも 汝に寄すちふ
  汝は如何に思(も)ふや 思へこそ 年の八年(やとせ)を
  切る髪の 吾(あ)が肩を過ぎ 橘の ほつ枝を過ぐり
  この川の 下にも長く 汝(な)が心待て
  (物不念 路行去裳 青山乎 振酒見者 
  都追慈花 尓太遥越賣 作樂花 佐可遥越賣 
  汝乎叙母 吾尓依云 吾乎叙物 汝尓依云 
  汝者如何念也 念社 歳八年乎 斬髪 与知子乎過 
  橘之 末枝乎須具里 此川之 下母長久 汝心待)

(3305) 考え事もせず道を行っても、青い春の山を振り返れば、
つつじ花が咲きにおうような彼女を思い、桜花が満開で咲いているような娘女を思う。
そんなあなたをわたしに引き寄せると言う。わたしをあなたに引き寄せるという。
(だが)荒山でも人が心を寄せれば、山も人に心を寄せると言うことだ。
あなたの心をゆめ(決してわたしから離さないように)

(3306) どうしたら恋しく思う心がやむものかと、天地の神を祈ったけれど、
わたしの思いは増すばかりだ。

(3307) そうだからこそ、8年の年月を、子供ならば断髪姿の稚児を過ぎる年頃になる、
長くのびた橘の末枝ほどの年月を過ごしてきた。
この川が下流に長くつづくように、あなたも気長に待ちなさい。

(3308) 天地の神をさえわたしは祈りました。恋というものは、
ああ、ほんとにやまないものだ。
(3309) 前述にほぼ同じ。。

問答五首のうち、はじめの二首が人麻呂の、つづく二首が妻土形娘子の作。
終わりの長歌一首は人麻呂が先の長歌二首を組み合わせて一首にしたもの。

>つつじ花 にほひ処女(をとめ) 桜花 栄え処女
 (茵花 香未通女 櫻花 盛未通女 )
人麻呂は娘子の匂うばかりの艶(あで)やかさをうたい、

>如何にして恋やむものぞ天地の神を祈れど吾(あ)は思ひ益す
どうしたら恋がやむかと神に祈っても思いは増すばかりだと歌う。

それに答えて娘子も8年の歳月を思いながら
>天地の神をも吾(あれ)は祈りてき恋ちふものはああ止まずけり
恋情の止み難きを(ああ止まずけり)と溜息混じりに歌う。。

この問答歌を作る動機はお互いの恋情を確かめ合うことだったのでしょう。
この問答歌には作歌時期を示唆する語句があります、それによるとふたりの邂逅から8年を経過した春のことだったようです。
二人が出会ったのは草壁皇子没の頃だったでしょうからこの歌は698年頃の作。
8年もの間お互いの恋情を歌にし続けることが出来るのは、この恋が叶わぬ恋だったからでしょうか。。。。
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前回も書きましたが、ひらがながない時代だったので、漢字で書かれています。
但しそれは漢文ではなく大和言葉を漢字に当てたもの。
面白い表記が色々ありますが、
「おとめ」を「未通女」と書き表すのはなんだかいかにも万葉的。。
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記事は、主に
 1,秘められた挽歌-柿本人麻呂と高市皇子
 2,無冠の恋歌
 末田 重幸著
 講談社
 の2冊を、参考にさせてもらっています。
もし、興味をお持ちになられた方がいたら、読まれてみてはと思います。。
ただ私の文章については、歌の解釈歴史的背景その他に誤りが多々あるかと思いますので、間違っても決してお勉強のご参考にはなさらないよう
伏してお願い申し上げます。<(_ _)>
[ 更新日時:2006/11/04 08:45 ]
by sylphid-mave | 2008-11-13 23:45 | 柿本人麻呂

by かぁ