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人麻呂恋歌 ・・正(ただ)に心緒(おもひ)を述ぶ 四拾七首

どぶログ
2006/10/21のBlogより転載・・・・・・

万葉集 巻十一 
正述心緒 一百四十九首のうち 柿本朝臣人麻呂四十七首
心緒(おもい)は心におもふ事 さて心に思うこととは。
2368 たらちねの母が手離れかくばかり
      すべなきことはいまだせなくに
 垂乳根乃母之手放如是許無為便事者未為國
 (こんなにどうしようもない想いは、生まれて初めてです。。。)

2369 人の寝(ぬ)る味寐(うまい)は寝ずてはしきやし
      君が目すらを欲りて嘆くも
 人所寐味宿不寐早敷八四公目尚欲嘆 公矣思尓暁来鴨
 (人並みにあなたと共寝することも出来ない、
  愛しい あなたの目だけでも見ていたいと、嘆くだけ)

2370 恋ひしなば恋ひも死ねとや玉ほこの
      道行き人に言も告げなき
     戀死戀死耶玉鉾路行人事告兼
     (戀死するならお勝手に。。)
 
2371 心には千たび思へど人に言はず
        吾(あ)が恋ふ妹を見むよしもがも
     心千遍雖念人不云吾戀[人偏+麗]見依鴨

2372 かくばかり恋ひむものそと知らませば
       遠く見つべくありけるものを
        是量戀物知者遠可見有物

2373 いつはしも恋ひぬ時とはあらねども
      夕かたまけて恋ふはすべなし
        何時不戀時雖不有夕方枉戀無乏

2374 かくのみし恋ひし渡れば玉きはる
       命も知らず年は経につつ
        是耳戀度玉切不知命歳經管

2375 吾(あれ)ゆ後生まれむ人は吾(あ)がごとく
        恋する道に逢ひこすなゆめ
       吾以後所生人如我戀為道相與勿湯目

2376 ますらをの現心(うつしこころ)も吾(あれ)はなし
        夜昼といはず恋ひし渡れば
       健男現心吾無夜晝不云戀度

2377 何せむに命継ぎけむ我妹子に
        恋ひざる先にも死なましものを
       何為命継吾妹不戀前死物

2378 よしゑやし来まさぬ君を何せむに
       いとはず吾(あれ)は恋ひつつ居らむ
      吉恵哉不来座公何為不厭吾戀乍居

2379 見渡しの近き渡りを廻(たもとほ)り
       今や来ますと恋ひつつそ居る
      見度近渡乎廻今哉來座戀居

2380 はしきやし誰が障(さ)ふれかも玉ほこの
       道見忘れて君が来まさぬ
      早敷哉誰障(イさふる)鴨玉桙路見遺公不來座

2381 君が目の見まく欲しけみこの二夜
      千年(ちとせ)のごとも吾(あ)が恋ふるかも
     公目見欲是二夜千歳如吾戀哉

2382 うち日さす宮道を人は満ち行けど
      吾(あ)が思(も)ふ君はただ一人のみ
      打日刺宮道人雖満行吾念公正一人

2383 世の中は常かくのみと思へども
      はてはわすれすなほ恋ひにけり
     世中常如雖念半手不忘猶戀在

2384 我が背子は幸(さき)くいますと度まねく
      吾(あれ)に告げつつ人も来ぬかも
     我勢古波幸座還來我告來人來鴨

2385 あら玉のいつとせ経れど吾(あ)が恋ふる
      跡なき恋のやまぬあやしも
     麁玉五年雖經吾戀跡無戀不止恠

2386 巌(いはほ)すら行き通るべきますらをも
       恋ちふことは後悔いにけり
     石尚行應通建男戀云事後悔在

2387 日暮れなば人知りぬべみ今日の日の
      千年のごとくありこせぬかも
     日低人可知今日如千歳有與鴨

2388 立ちて居てたどきも知らず思へども
      妹に告げねば間使も来ず
    立座態不知雖念妹不告間使不來

2389 ぬば玉のこの夜な明けそ赤らびく
      朝行く君を待てば苦しも
     烏玉是夜莫明朱引(イあけゆけは)朝行公待苦

2390 恋するに死にするものにあらませば
       我が身は千たび死にかへらまし
      戀為死為物有我身千遍死反

2391 たまゆらに昨日の夕へ見しものを
      今日の朝(あした)に恋ふべきものか
    玉響昨夕見物今朝可戀物
     (昨夜逢ったばかりなのに、今朝はもうこんなに恋しい)

2392 なかなかに見ざりしよりは相見ては
       恋しき心いよよ思ほゆ
     中不見有從相見戀心益念

2393 玉ほこの道行かずしてあらませば
      ねもころかかる恋には逢はじ
     玉桙道不行為有者惻隠此有戀不相

2394 朝影に我が身はなりぬ玉かぎる
      ほのかに見えて去にし子ゆゑに
     朝影吾身成玉垣入風所見去子故
 (淡くはかない影のように、私の身はやせてしまった。一目見たあの娘のせいで。)

2395 行けど行けど逢はぬ妹ゆゑ久かたの
      天の露霜に濡れにけるかも
     行行不相妹故久方天露霜沾在哉
 (何度行っても逢ってくれないあの娘のせいで、雨の露霜に濡れてしまいました。)

2396 たまさかに我が見し人をいかならむ
      よしをもちてかまた一目見む
    玉坂吾見人何有依以亦一目見
    (偶然に見たあの人、また一目見ることができるでしょうか。)

2397 しましくも見ぬば恋しき我妹子を
      日に日に来れば言の繁けく
     暫不見戀吾妹日日來事繁

2398 玉きはる世まで定めて恃めたる
      君によりてし言の繁けく
     年切及世定特公依事繁

2399 赤らびく肌も触れずて寝たれども
      こゝろをことに吾(あ)が思(も)はなくに
       朱引秦不經雖寐心累我不思
 (お前の膚にも触れずに独り寝したが、
     それでも心変わりをするようなことはないよ。)

2400 いていかにきはみはなはたとこゝろの
       うするまでおもふこふらくのゆへ
      伊田何極太甚利心及失念戀故
   (私の心は戀でいっぱいです。なんにも出来ません。
              わかりません。。)

2401 恋ひ死なば恋ひも死ねとや我妹子が
       我家(わぎへ)の門を過ぎて行くらむ
     戀死戀死哉我妹吾家門過行
 (恋死するなら勝手にどうぞと、おれ家をを通り過ぎていくのか、あの女は。)

2402 いもかあたり遠くみゆれはあやしくも
      われはこふるかあふよしをなみ
     妹當遠見者恠吾戀相依無

2403 たまくぜのきよきかはらにみそぎして
        いのるいのちもいもがためなり
      玉久世清川原身秡為齋命妹為

2404 おもふより見るよりものはあるものを
       ひとひへたつるわするとおもふな
      思依見依物有一日間忘念

2405 垣ほなす人は言へども高麗錦(こまにしき)
      紐解き開けし君ならなくに
    垣廬鳴人雖云狛錦紐解開公無

2406 高麗錦紐解き開けて夕へだに
      知らざる命恋ひつつあらむ
    狛錦紐解開夕戸不知有命戀有

2407 もゝさかふねかつきいるゝやうらさしてはゝ
      はとふともその名はいはし
     百積船潜納八占刺母雖問其名不謂

2408 まゆねかきはなひ日もときまつらんや
      いつしか見んとおもふわかきみ
    眉根削鼻鳴紐解待哉何時見念吾君
 (眉を掻き、くしゃみをし、紐も解けて待っているだろうか、
         いつ逢えるのかと苦しんでいる私を。)
 万葉の人々は、くしゃみや眉毛のかゆみ、紐が自然に解けることなどを、
 恋人が訪れる前兆だと考えていたそうです。

2409 きみこふとうらふれをれはくやしくも
       わかしたひもをむすひてたゝに
     君戀浦經居悔我裏紐結手徒

2410 あら玉の年は果つれど敷妙の
      袖交へし子を忘れて思へや
    璞之年者竟杼敷白之袖易子小忘而念哉

2411 しろたへのそてをはつかに見しからに
       かゝるこひをもわれはするかも
     白細布袖小端見柄如是有戀吾為鴨

2412 我妹子に恋ひすべなかり夢に見むと
       吾(あれ)は思へどい寝らえなくに
      我妹戀無乏夢見吾雖念不所寐

2413 故もなく吾(あ)が下紐そとけたるを
       人にな知らせ直に逢ふまで
     故無吾裏紐令解人莫知及正逢

2414 恋ふること心遣りかね出で行けば
       山も川をも知らず来にけり
     戀事意遣不得出行者山川不知來
   (恋の切なさを慰めかね、やりきれなくて出てきたので、
        山をも川をも夢中で来てしまった。)
 
明けど暮らせど、戀戀戀ですね。。
以上、 正(ただ)に心緒(おもひ)を述ぶことでした。。
人麻呂戀歌 番外編かな。。

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記事は、主に
 1,秘められた挽歌-柿本人麻呂と高市皇子
 2,無冠の恋歌
 末田 重幸著
 講談社
 の2冊を、参考にさせてもらっています。
もし、興味をお持ちになった方がいたら、読まれてみてはと思います。。
ただ私の文章については、歌の解釈歴史的背景その他に誤りが多々あるかと思いますので、間違っても決してお勉強のご参考にはなさらないよう
伏してお願い申し上げます。<(_ _)>
[ 更新日時:2006/10/21 18:51 ]
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by sylphid-mave | 2008-10-22 06:04 | 柿本人麻呂 | Comments(0)